書くこととその基盤に関する研究(試行錯誤中)

  • 2019.09.06 Friday
  • 22:49

こんにちは。

 

研究の紹介をします。話はいきなり飛びますが、ブログの文体がいまだに定まらない…どうしたものか…という悩みはいったん脇におき、私の研究紹介ではなく勤務先で教学IR担当の石川先生の仕事を紹介したいと思います。

 

私は、学部所属ですが、実際の仕事は学習・教育開発センターという教育改善・改革組織のものがメインになっています。例えば、「総合基礎教育科目」という非・学部専門科目のカリキュラムを考えたり、「基礎演習機廚箸い初年次科目(大学生活に慣れることや基礎的なライティング能力育成を目標とする初年次ゼミ)のテキストやルーブリックを作成したり、自分がそれら授業を実際担ったりしています。それ以外にもあれこれあれこれ担っています(ファーストを守っていてもレフトにボールが飛び、「とってください」と指示あればとりに走ります)。

 

「基礎演習機廚任蓮⊂論文(A4で1〜2枚程度)を初年次学生全員が書き、提出し、その中から優秀なものを選考委員の教員がルーブリックを用いて評価し、表彰する「小論文コンテスト」という仕組みもあります。

 

教学IR担当の石川先生は、この「基礎演習機廚亡悗垢觚Φ罅丙埜紊里發里呂海亮業だけを対象にしたものではありませんが、関連するのであげました)を積みあげています。以下のものです。

 

■石川勝彦・児島功和・青山貴子(2017)「初年次ゼミの学習到達度を左右する要因の探索 : 決定木分析を用いた試み

■石川勝彦・児島功和(2018)「初年次ゼミの学習を促進するクラス環境 : クラス環境と学生の特性との相互作用に注目して

■石川勝彦・児島功和(2018)「識別力を重視したライティングルーブリック開発の試み : 分散分析を用いた特異項目機能分析

■近藤裕子・石川勝彦(2019)「多因子からなる小論文評価ルーブリック作成の試み

■石川勝彦(2019)「SAからのサポートが初年次における学修成果に及ぼす影響

■石川勝彦(2019)「初年次ゼミにおけるSAの実働実態とやりがいの構造

■石川勝彦(2019)「初年次ゼミにおけるクラス風土、SA、授業デザインの相互関係 : 交差遅れモデルによる検討

■近藤裕子・石川勝彦(2019)「学生のレポートライティングへの課題意識と初年次ライティング指導への期待の関連

 

全ての内容をここで紹介することはできませんが、「ライティングスキル」に関する成長実感に強い影響を与えているのはなにより授業の雰囲気、具体的には学生が授業において人格的に尊重されていると感じているかどうかである、との知見も示されています。これはあくまで議論を単純化した説明ですが、他にもさまざまな角度から授業が分析されています。

 

ぜひ、ご一読ください。

研究業績

  • 2019.08.15 Thursday
  • 10:47

*逐次更新します。

【著書】

1.樋口明彦・上村泰裕・平塚眞樹編著『若者問題と教育・雇用・社会保障―東アジアと周縁から考える』(20113/法政大学出版局)執筆箇所:7章「‘下位大学’の若者たち―学習の意味と社会的ネットワークpp.157-182
 

2.石戸教嗣・今井重孝編著『システムとしての教育を探る―自己創出する人間と社会』(20116/勁草書房)執筆箇所:3章「教育関係pp.49-6014「〈学校から仕事へ〉の移行と教育システムpp.232-246、キーワード「職業教育」p332
 

3.乾彰夫編『高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか』(2013年7月/大月書店)執筆箇所:7章「若者は大学生活で何を得たのか?―大学生活の構造とその意義」pp.247-279

 

4.溝上慎一・松下佳代編『高校・大学から仕事へのトランジション』(2014年4月/ナカニシヤ出版)執筆箇所(共著):7章「後期近代における〈学校から仕事への移行〉とアイデンティティ―「媒介的コミュニティ」の課題」pp.215-236

 

5.居神浩編『ノンエリートのためのキャリア教育論』(2015年2月/法律文化社)執筆箇所:5章「ノンエリート大学生を対象としたキャリア教育の射程−生活実態に根差した〈キャリア教育/支援〉に向けて」pp.125-147

 

6.シリーズ「大学評価を考える」第7巻編集委員会編『大学評価と「青年の発達保障」』(2016年5月/晃洋書房)執筆箇所:第3章「大学生活と経済的困窮」pp.47-62

 

7.成瀬尚志編『学生を思考にいざなうレポート課題』(2016年12月/ひつじ書房)執筆箇所:第2章「論証型レポートについて考える」pp.15-39、第3章「レポート論題の設計」pp.41-78

 

8.藤本夕衣・古川雄嗣・渡邉浩一編『反「大学改革」論―若手からの問題提起』(2017年6月/ナカニシヤ出版)執筆箇所:第7章「居住の移行と大学生活」pp.117-130

 

9.乾彰夫・本田由紀・中村高康編『危機のなかの若者たち―教育とキャリアに関する5年間の追跡調査』(2017年9月/東京大学出版会)執筆箇所:12章「大学大衆化時代の学びと生活」pp.267-288

 

10.植上一希・寺崎里水編『わかる・役立つ 教育学入門』(2018年9月/大月書店)執筆箇所・第4章「貧困世帯の子どもと学校」pp.38-49

【学術論文(翻訳含む)】

1.映画という教育問題―大正期における規制と利用をめぐって」(単著/20053/東京都立大学人文学部『人文学報』359
 

2.意味の社会的生成―ルーマン理論を手がかりとして」(単著/20073/首都大学東京都市教養学部人文・社会系/東京都立大学人文学部教育学研究室『教育科学研究』22)
 

3.明日を模索する若者たち―高卒3年目の分岐:「世界都市」東京における〈学校から雇用へ〉の移行過程に関する研究」(共著/20073/首都大学東京都市教養学部人文・社会系/東京都立大学人文学部教育学研究室『教育科学研究』22
 

4.大学生の就職活動のインタビュー分析」(共著/20083/首都大学東京都市教養学部人文・社会系/東京都立大学人文学部『人文学報』396
 

5.〈再著述〉としての成長とそのコミュニケーショナルな条件―ナラティヴ・セラピーを手がかりとして」(単著/ 20083/首都大学東京都市教養学部人文・社会系/東京都立大学人文学部教育学研究室『教育科学研究』23)
 

6.教育経歴・キャリア形成の分岐点としての高校」(共著/20093/日本教育学会特別課題研究「変容する青年期に関する総合的研究」並びに日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)(研究代表者 乾彰夫)「大都市における若年者の教育・職業の移行とキャリア形成に関するコーホート調査」報告書)
 

7.若者の移行過程における大学経験―『下位校』大学の学生を中心に」(単著/20093/日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)(研究代表者 船橋晴俊)「公共圏の生成と規範理論の探求」報告書)
 

8.「「新時代」を働き・生きる若者たち:高卒5年目の人生経路―「世界都市」東京における<学校から雇用へ>の移行過程に関する研究」(共著/20093/首都大学東京人文・社会系/東京都立大学人文学部教育学研究室『教育科学研究』24
 

9.若者の移行における困難の複雑性―就労および家族問題に着目して」(共著/20103/首都大学東京都市教養学部人文・社会系/東京都立大学人文学部『人文学報』426
 

10.〈大人への移行〉過程を捉える分析視角の検討―「移行の長期化」をめぐる議論を手がかりとして」(共著/20113/首都大学東京人文・社会系/東京都立大学人文学部教育学研究室『教育科学研究』25
 

11.共によりよく学ぶこと―学生の成功を助ける学習コミュニティのインパクト」(翻訳/20113/首都大学東京人文・社会系/東京都立大学人文学部教育学研究室『教育科学研究』25
 

12.若者の〈社会へのわたり〉と家族問題」(共著/20116/全国高校生活指導研究協議会編『高校生活指導』189
 

13.Accounting for the early labour market destinations of 19/20-year-olds in England and Wales and Japan(共著/20122/Journal of Youth Studies 15;1
 

14.高等教育の大衆化時代における『新しい不平等』日英の若者移行調査比較から」(共著/20123/日本教育学会特別課題研究「若者の教育とキャリアに関する調査」並びに日本学術振興会科学研究費補助金(基盤A)(研究代表者 乾彰夫)「若年者の教育・職業の移行とキャリア形成に関するコーホート研究」報告書)
 

15.“Identity and the Transition from School to Work in Late Modern Japan : strong agency or supportive communality ?”(共著/2012年12月/Research in Comparative and International Education 7;4)
 

16.「「ノンエリート大学生」の教育と支援」(単著/2014年3月/教育科学研究会編『教育』2014年4月号)
 

17.「階層と教育からみる若者の移行過程」(単著/2014年8月/日本教育学会特別課題研究「若者の教育とキャリアに関する調査」並びに日本学術振興会科学研究費補助金(基盤A)(研究代表者 乾彰夫)「若年者の教育・職業の移行とキャリア形成に関するコーホート研究」報告書)

 

18.「初年次ゼミの学習到達度を左右する要因の探索―決定木分析を用いた試み」(共著/2017年3月/山梨学院大学生涯学習センター紀要『大学改革と生涯学習』第21号)

 

19.「働くことの不安定化とキャリア教育実践」(単著/2017年3月/山梨学院大学経営情報学研究会『経営情報学論集』第23号)

 

20.「「大衆化した大学」におけるキャリア教育実践の分析」(共著/2017年3月/『大学教育研究ジャーナル』第14号)

 

21.「高等教育機関における新しい「専門職」―政策・市場・職能の観点から(共著/2017年3月/『大学教育研究ジャーナル』第14号)

 

22.「大変だけど成長につながる専門学校生の学び」(単著/2017年12月/ベネッセ教育総合研究所「専門学校生の学習と生活に関する実態調査」)

 

23.「初年次ゼミの学習を促進するクラス環境―クラス環境と学生の特性との相互作用に注目して」(共著/2018年1月/山梨学院大学法学研究会『法学論集』第81号)

 

24.「識別力を重視したライティングルーブリック開発の試み」(共著/2018年3月/山梨学院大学経営情報学研究会『経営情報学論集』第24号)

 

25.「「意味のある授業」をつくる模索―ふたりの大学教員の試み」(共著/2018年5月/教育科学研究会編『教育』2018年6月号)

 

26.「大学における新しい専門職のキャリアと働き方―聞き取り調査の結果から」(共著/(2018年10月ウェブにて早期公開)/大学改革支援・学位授与機構『大学評価・学位研究』第20号)

 

27.「「第三の領域」における教職員についての一考察―学生支援、男女共同参画、地域貢献に関する職種を事例として」(共著/2019年3月/山梨学院大学経営情報学研究会『経営情報学論集』第25号)

 

28.「「新しい専門職」として大学で働き続けたいのは誰か―任期の有無と仕事満足度に着目して」(共著/2019年5月/大学教育学会『大学教育学会誌』第41巻第1号)

【学会報告】

1.個別化・不安定化する若者の移行とネットワーク―高卒3年間の経年的インタビュー調査を通して(共同/20078/日本教育学会第66回大会一般研究発表/慶応義塾大学)
 

2.高校生活と進路選択」(共同/20088/日本教育学会第67回大会特別課題研究/佛教大学)
 

3.若者の移行における困難の複雑性―仕事・家族・アイデンティティ」(共同/20098/日本教育学会第68回大会一般研究発表/東京大学)
 

4.移行過程の変容における成人期の再定位―“Emerging Adulthood”論を手がかりに(共同/20108/日本教育学会第69回大会テーマ型研究発表/広島大学)
 

5.日本とイギリスにおけるコーホート調査からみえる若者の現状―雇用・学校経験・家庭背景に着目して」(共同/20118/日本教育学会第70回大会特別課題研究/千葉大学)
 

6.「大学における「生活指導」の不可避性と困難」(招待・単独/2013年9月/日本生活指導学会第31回研究大会課題研究/和歌山大学)
 

7.「大学進学は若者に何をもたらしたのか?―質的・量的調査による分析を中心として(招待・単独/2014年3月/大学評価学会第11回大会第2分科会「発達保障」テーマ/山梨大学)

 

8.“How do social class and education affect youth transition in Japan-Youth Cohort Study of Japan”(共同/2014年7月/VXIII ISA World Congress of Sociology 2014/パシフィコ横浜)

 

9.「レポート論題タキソノミーー剽窃が困難となる論題分析」(共同/2016年6月/大学教育学会第38回大会/立命館大学)

 

10.「第三の領域に属する教職員養成の政策実施過程――分野を横断しての事例分析」(共同/2017年5月/日本高等教育学会第20回大会/東北大学)

 

11.「レポート論題と評価の種類」(共同/2017年6月/大学教育学会第39回大会/広島大学)

【その他報告】
1.「岐阜大学における課題解決型長期インターンシップについて」(共同/2014年3月/大学教育改革フォーラムin東海2014/名古屋大学東山キャンパス)

 

2.「レポート課題において何を問うべきか―レポート論題に関するアンケート調査から」(共同/2016年3月/第22回大学教育研究フォーラム/京都大学吉田キャンパス)

 

3.「レポート論題タキソノミー―論題のスコープに着目して」(共同/2017年3月/第23回大学教育研究フォーラム/京都大学吉田キャンパス)

 

4.「初年次ゼミの学習到達度を左右する要因の探索(共同/2017年3月/第23回大学教育研究フォーラム/京都大学吉田キャンパス)

 

5.「レポート論題を分析する―論題のタイプ化に向けた制約条件の検討」(共同/2019年3月/第25回大学教育研究フォーラム/京都大学吉田キャンパス)

 

【科研費】

1.【2007〜2009年度】大都市部における若年者の教育・職業の移行とキャリア形成に関するコーホート調査(基盤研究(A))(研究代表者:乾彰夫)児島は連携研究者

 

2.【2010〜2013年度】若年者の教育・職業の移行とキャリア形成に関するコーホート研究(基盤研究(A))(研究代表者:乾彰夫)児島は研究分担者

 

3.【2014〜2016年度】若者の教育とキャリア形成に関するパネル調査の詳細分析と国際比較(基盤研究(B))(研究代表者:乾彰夫)児島は研究分担者

 

4.【2015〜2017年度】剽窃が困難となるレポート論題の類型化と論題に応じたルーブリックの開発(挑戦的萌芽研究)(研究代表者:成瀬尚志)児島は研究分担者

 

5.【2016〜2018年度】専門学校教員の「職業的アイデンティティ」‐「役割認識・専門性認識」に着目して(基盤研究(C))(研究代表者:植上一希)児島は研究分担者

 

6.【2016〜2019年度】高等教育新興プロフェッションの養成メカニズムに関する実証的研究(基盤研究(C))(研究代表者:二宮祐)児島は研究分担者

 

7.【2019〜2021年度】専門学校教員のキャリア形成過程の類型化(基盤研究(C))(研究代表者:植上一希)児島は研究分担者

 

8.【2019〜2022年度】効果的な評価を可能にするレポート論題についての実証研究(基盤研究(C))(研究代表者:成瀬尚志)児島は研究分担者

 

論文が出ました

  • 2017.04.20 Thursday
  • 20:49

論文が出ました。

 

ひとつは「働くことの不安定化とキャリア教育実践」です。学内紀要の論文になります。

そして、この論文とセットになるのは「「大衆化した大学」におけるキャリア教育実践の分析」で、徳島大の『大学教育研究ジャーナル』掲載のものです、いずれも大学におけるキャリア教育授業(実践)についての文章となります。

 

もうひとつは、「高等教育機関における新しい「専門職」:政策・市場・職能の観点から」です。群馬大学の二宮祐先生を代表とする科研チームによる研究です。上記論文と同じ『大学教育研究ジャーナル』掲載となります。

高等教育改革において、従来の教員でもなく、従来の事務職員でもない新しい「専門職」の必要性が主張され、その導入が図られています。この論文は、その新しい「専門職」の実態はどうなっているのかを、政策、市場、職能という観点から整理したものです。新しい「専門職」としているのは、ファカルティ・ディベロッパー(FDer)、キャリア支援担当者、インスティテューショナル・リサーチ(IR)担当者、リサーチ・アドミニストレーション(URA)担当者、産官学連携コーディネート担当者です。現在この科研では調査を実施中です。今後関連学会での報告を予定しています。

 

かくいう私もキャリア支援・教育担当者として、非・学部組織で特任教員として仕事をしていた時期があります(今も違った立場での特任です)。最近では大学院卒で大学の世界に残っている方の初職がこうした立場ということも多いのではないでしょうか。こうした立場は、大学の「内部の外部」といいますか、なかなか難しい立ち位置となります。研究である以上、自分の経験やそこで感じたことをそのままぶつけるようなものではありませんが、少なくても本科研に参加した動機として自分の経験があります。

 

他方、この論文でいうところの新しい「専門職」は大学改革の鍵として主張されることも多く、しかしそうでありながら実態がほとんど明らかになっていません。今後の大学の在り方を考えるうえでも重要な資料になるのでは、なってほしいと考えています。

 

どうぞよろしくお願いいたします。

 

キャリア関係図書(2014年度版)

  • 2014.11.17 Monday
  • 12:57
昨年度岐阜大学図書館の方にご協力していただき、キャリア関係図書を展示していただいたのですが、今年度もということで。

図書館の他の蔵書等との関係もありいれていただくことが難しいものもあったのですが、私の希望を概ね反映していただきました。岐大図書館の方ありがとうございます。私は前任校でも図書館の方と共同で行なう仕事があり、また図書館でアルバイトをしていたこともあります。そこで知ったのは、とにかく司書の方を中心に図書館の方は限られた予算のなかでよりよい施設にしようと大変な努力をされている、ということです。

以下、今年度リストです。昨年度選んだものは基本避けました。

〇本田由紀『社会を結びなおす』岩波ブックレット
〇岸政彦『街の人生』勁草書房
〇中村うさぎ『こんな私が大嫌い』イースト・プレス
〇大内裕和・竹信三恵子『「全身〇活」時代』青土社
〇乾彰夫『若者が働きはじめるとき』日本図書センター
〇東海林智『15歳からの労働組合入門』毎日新聞社
〇竹信三恵子『家事労働ハラスメント』岩波新書
〇工藤啓・西田亮介『無業社会』朝日新書
〇稲葉剛『ハウジングプア』山吹書店
〇渡辺峻編『大学生のためのキャリア開発入門』中央経済社
〇湯浅誠『どんとこい、貧困!』イースト・プレス
〇苅谷剛彦・本田由紀編『大卒就職の社会学』東京大学出版会
〇梅崎修・田澤実編『大学生の学びとキャリア』法政大学出版局
〇小林美希『ルポ職場流産』岩波書店
〇上西充子・川喜多喬編『就職活動から一人前の組織人まで』同友館
〇小林美希『ルポ“正社員”の若者たち』岩波書店
〇遠藤公嗣編『個人加盟ユニオンと労働NPO』ミネルヴァ書房
〇乾彰夫編『高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか』大月書店
〇田中秀臣『偏差値40から良い会社に入る方法』東洋経済新報社
〇牛久保秀樹・村上剛志『日本の労働を世界に問う』岩波ブックレット
〇熊沢誠『若者が働くとき』ミネルヴァ書房
〇中原淳・溝上慎一編『活躍する組織人の探求』東京大学出版会
〇溝上慎一・松下佳代編『高校・大学から仕事へのトランジション』ナカニシヤ出版
〇児美川孝一郎編『これが論点!就職問題』日本図書センター
〇佐藤博樹・永井暁子・三輪哲『結婚の壁』勁草書房
〇岩上真珠編『〈若者と親〉の社会学』青弓社
〇牟田和恵編『家族を超える社会学』新曜社
〇石田光規『孤立の社会学』勁草書房
〇石黒格・李永俊・杉浦裕晃・山口恵子『「東京」に出る若者たち』ミネルヴァ書房
〇多賀太編『揺らぐサラリーマン生活』ミネルヴァ書房
〇キャサリン・S.ニューマン『親元暮らしという戦略』岩波書店
〇久保田裕之『他人と暮らす若者たち』集英社新書
〇エリック・ブライシュ『ヘイトスピーチ』明石書店
〇『現代思想:就活のリアル』青土社

 

依頼報告(10月26日追記)

  • 2014.10.26 Sunday
  • 22:59
少し前に依頼報告をしてきました。

以下の文章はその報告の最初の節になります。*10月26日に最終節の一部を追記。報告は、私と『古典を失った大学』(NTT出版)著者の藤本夕衣さんで、藤本さんとは報告後も色々メールにてやり取りをさせていただき、とても勉強になりました。

**********************************************
1.大学教育の分化
1-1.問題の所在
 2011年、インターネット上で関東にある私立大学の初年次教育が注目される、あるいは“炎上”するという出来事があった。「アルファベットの書き方・読 み方」等の中学生段階で学ぶような授業内容を含んでいたことが、その要因である。「それでも大学か?」という声が多数寄せられたが、大学の設置基準を満た している以上、それでも大学であり、それもまた大学教育なのだ。
 他方、2014年に文部科学省は「若い世代の『内向き志向』を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積 極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図る」ことを目的に、「スーパーグローバル大学創生支援事業(Top Global University Project)」を立ち上げた。採択校のほとんどが、社会的にも広く名の知られた入学難易度の高い大学となっている。これもまた大学教育動向の一環であ る。日本学術振興会HPに公開されている申請書全文を読めばわかるように、採択校では高度な英語教育の推進が明記されている。
 高度な 英語運用能力等を獲得し、世界で活躍できる国際的な人材育成を目的とする大学がある一方で、初等・中等教育段階で本来は習得されているべき内容をきちんと 身につけさせるべく奮闘している大学もある。いずれも同じ大学教育である。したがって、「大学教育は○○であるべき」という規範的主張は、直ちに「それは 一体どのような大学を想定しているのか」という問いを呼び寄せざるをえない。例えば、「アルファベットの書き方・読み方」を教えるような大学は大学ではな いと、スーパーグローバル大学創生支援事業に採択された大学の教員が主張すれば、その言語行為は〈自己卓越化=差異化〉として機能し、大学教員間の不毛な分断を招くことにもなるだろう。
 上記のことをまとめると、大学教育を語るうえで、それがどのような社会的文脈に結びつけられたものかを意識する必要がある、ということである。とりわ け、そこで想定される大学生がどのような背景をもち、いかなる人生を歩んでいるのかを明らかにすることは、大学教育の効果、ならびにその責任を考えるうえ で重要であろう。


(中略)

6.大学の社会的責務―結びにかえて
6-1.まとめ
6-2.社会にとっての「大衆教育機関としての大学」
 非選抜型大学の卒業生――本報告のノンエリート大学生と同義――を対象にインタビュー調査を行った轡田竜蔵は、「大学進学は階層上昇の夢を見させる」と述べ、「学生募集に焦る非選抜型大学は、時として労働市場の実態をかんがみずに、現実離れしたキャリア・アップのイメージを煽る」と強く批判する。あわせて、そうした大学の卒業生が不安定な初期キャリアを歩んでいる現実を指摘する。しかしながら、調査対象者のほぼ全員が大学進学という選択を「よかった」と回答したといるという。少し長くなるが、その一人についての記述を引用したい。

 
 大学の専門を生かして学芸員を目指していたが、結果的にはハローワークでの求職活動を経て、専門とは全く関係のない土木建設事務所での技術職見習い工となった西山真司の事例を見てみよう。職場では、「高校中退の肉体労働系の人」が多く、「パチンコ、風俗、ギャンブル」のおしゃべりばかりしているという環境に、西山は確かに戸惑いを感じている。だが、希望職種とはまるっきり違った仕事につくことになったにもかかわらず、西山は大学に行った経験を高く評価している。友人をたくさん作り、「いろんな考え方について話し合えた」ことが何より「面白かった」からだという。そして、高校までと違い、年齢の幅も広く、「疑似的な社会勉強」ができたことは、今仕事で多様な価値観の人々とコミュニケーションをとっていくうえでもプラスになったと考えている。(轡田、2011、207頁)
 

 本報告で繰り返し述べてきたように、出身階層も低く、多様な高校の学科出身で、勉強は得意ではなく、初期キャリアでは不安定な移行をする傾向が強いのがノンエリート大学生である。かれらは1990年代後半以降の大学進学率上昇の“申し子”である。見方を変えれば、ノンエリート大学は、初等・中等教育の機能不全の責任・ツケを一手に担わされているといえる。しかしながら、そうであったとしても、ノンエリート大学には様々な点で“いたらない”かれらをそれなりの職業人・市民として社会に送り出さなければならないという経営的事情があり、また社会的責務がある。大学生の学力低下を主たる理由とし、「大学は多すぎる」との声は大きい。それでも大学か、というわけである。それでは、ノンエリート大学、特に地方のこうした大学を潰せばそれでよいのだろうか。今後更なる改善が必要として、現時点においても“いたらない”かれらをそれなりの職業人・市民として地域社会に送り出している、あるいは〈大人への移行〉を支えている、それらの大学がいま現在果たしている社会的役割を誰が担うのであろうか。
 本報告が狙いとしたのは、ノンエリート大学生を対象にどのような大学教育を行えばいいのかということだけではなく、大衆化した大学の社会的責務を問いなおす、ということであった。

*轡田(2011)は、轡田竜蔵「過剰包摂される地元志向の若者たち―地方大学出身者の比較事例分析」樋口明彦・上村泰裕・平塚眞樹編『若者問題と教育・雇用・社会保障』(法政大学出版局)。


 

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